しんぶん赤旗2022年12月26日(月)に掲載
安保3文書閣議決定 各界抗議〈続報〉
同志社大学教授 浜 矩子(はま のりこ) さん
平和主義が日本の役割
安保3文書に書かれているのは安全保障政策の大転換です。「専守防衛」をかなぐり捨てて高度な攻撃能力を持つという、慄然(りつぜん)とする内容です。「たたかいたい」という意思が前面に出ています。「平和を愛する諸国民の公正と信義」を信頼して「安全と生存を保持しよう」という日本国憲法の精神と全然違う。そんな大ごとをぽんと出して、国民に何の相談もなく閣議決定するというのは暴挙です。
3文書は大転換を正当化するために、周辺環境の変化を強調します。ロシア、北朝鮮、中国をめぐる国民の不安につけこみ、「従来のままではいけない」という雰囲気をつくろうとしています。だけど本当は、周辺事情が危うくなればなるほど、「断じて日本は平和主義を貫く」というべきです。だれかが軍拡合戦に歯止めをかけなければいけません。「それが日本の役割なのだ」と高らかに宣言すればよい。多角的な協調に基づく平和という方策を、日本は執念深く力強く発信すべきです。
多くのメディアで財源の話が先行して騒がれたのは残念なことです。「軍拡は必要かもしれないけど増税や国債発行はだめだ」という議論は、問題を矮小化(わいしょうか)するものです。周辺国との緊張を高める大軍拡こそが問題なのだということを、声高にいい続けましょう。(しんぶん赤旗2022年12月26日)