※しんぶん赤旗2023年5月22日(月)掲載記事 記事pdf
杉並区議選 投票率アップへ市民動く|
女性議員半数 自民多数落選
東 京 低い投票率が課題の地方選挙。4月の東京都杉並区議選では、投票率を上げるため市民が奔走、投票率は4ポイント上がりました。女性当選者が男性を上回り、新人15人が当選、自民党は幹事長含め7人が落選。住民はなぜ動いたのでしょうか。 (林直子)
投票率は前回から4.19ポイント増え43.66%、約2万人が新たに投票しました。定員48の半数にあたる24人の女性が当選。分裂していた自民党は16から9議席、公明党が7から6議席に減らす中、立憲民主党は3から6議席に増やし、日本共産党は現有6議席を維持しました。
「ひとり街宣」
選挙で行われたのは、特定候補の応援だけではありません。投票率アップのため、市民はさまざまに動きました。
お店で投票済証を見せると割引などが受けられる「選挙割すぎなみ2023」。区議の議案賛否一覧をつけた「選挙に行こう」チラシ。全候補69人へのアンケート結果をカタログ化、自分の考えに近い候補をネット検索できる「杉並区議選ドラフト会議」-。
個人がプラカードなどを持ち駅頭にたつ「ひとり街宣」は、岸本聡子区長も実施。区長と協力する候補が会派を超えて対話する「共同街宣」も注目を集めました。
「誰が何をしたか誰も知らない」といわれるほど。個人がそれぞれに行動し、街宣やSNSで交流しました。熱意はどうしてうまれたのか。
初めてひとり街宣をした、りこぴんさんは「2022年に岸本さんが新区長になった選挙で、ひとり街宣した人たちが今回、区議選に立候補したんです。共倒れを防ぐには、投票に行く人を増やすしかない。少しなら、と私も始めました」と話します。
知らない人から、がんばって、投票行ったよ、と励まされることも。結局、投票日まで3週間続けました。
〝投票するだけ〟だった住民にも影響が。
「普通の人が動いている。自分も何かしたい」。区内の会社員(40代)は初めて、友人に投票に行くようお願いしました。職場でも、区政の話題がよく出るように。「私はできることをちょっとしただけ。みんなの一歩でこんなに変わるなんて」
杉並区は自民・石原伸晃氏の地盤。保守系区長が20年近く続きました。21年衆院選小選挙区で、市民と野党の統一候補・立民の吉田晴美氏を当選させてから大きく変わり始めました。22年区長選では岸本氏が、気候危機対策、対話によるまちづくり、民営化見直し、ジェンダー平等などをかかげて当選。政治を勳かす体験を重ねた市民が今年、区議会も変えました。
自分には力が
「私の選挙」として多くの人が加わるきっかけになった区長選。会社員の菅沼摩佐子さん(44)は「『おっさんゴルフ政治』への反感は女性の方が強かった」と話します。
「そこに、住民の声を区政に反映してくれる女性リーダーが現れました。でも選挙応援のハードルは高かった」。ひとり街宣は、いつでもどこでも誰でもできる応援として、急速に広がりました。「自分たちにできる形に、市民が選挙をぐっと引き寄せた。自分には力があるという感覚、エンパワーメントを強く感じました」
課題も意識されています。岸本区長の選対本部長を務めた、アジア太平洋資料センター共同代表の内田聖子さんは「新しい政治を望む声は高まり続けています。それでも区民の半分以上が投票に行っていない。本当の無関心層とどうつながるかが課題」と語ります。
「区議選では一定、エンパワーできました。しかしまだ多くの人が現状を自己責任と思わされ、行政を変える発想から遠ざけられている。選挙結果にかかわらず、住民の運動は止まってはいけない」