政治は地域から変わる

しんぶん赤旗2023年5月4日(木)掲載記事  記事pdf

石井彰のテレビ 考現学

 永田町だけを見ていると、自民党一強体制は変わらないように映ります。でも私の住む杉並区から見ると、この3年で政治は劇的に変わりました。

女性議員の増加

 今回の統一地方選挙で女性の当選者が増えました。杉並区では定数48人のうち性別非公表の一人を除いた47人中、女性議員が24人で過半数です。前回2019年は女性が15人でしたから画期的です。区議会の景色(紺系スーツの男性議員多数)はカラフルに、議論の中身も大きく変わるでしょう。
 この変化は急に起きたわけではありません。まず2021年衆議院選挙では「市民と野党の共闘」で、立民の吉田はるみ候補が初当選しました。また区長選挙ではこの枠組みに多くの住民運動が加わり、187票差で岸本聡子新区長が誕生しました。そして区議選では、この流れの中から野党系の女性新人候補が多数立候補して当選しました。この結果、自民現職7人、公明現職1人が落選しました。
 その背景には投票率が前回から4%以上アップしたことがあります。これまでの地域や政党、団体などの代表だけでなく新しい女性たちが多数立候補して選挙がより身近になり、投票率が上がって現職を追い落としました。また新区長に賛同する野党系候補者が、党派を超えて共同で街頭宣伝を繰り返し、区民の関心を高めました。
 全国でも兵庫県宝塚市では定数26で女性14人が当選。東京都武蔵野市と愛知県日進市では男女同数になっています。

変化映し出せず

 地域から変化の大きなうねりが始まっているのに、テレビはその変化を、きちんと映し出せていないように感じます。
 社会の半分以上は女性です。議員や首長の半分以上が女性になっても不思議ではありません。むしろこれまで男性ばかりが政治の世界を占めていた(門を閉めていた)ことのほうが、不思議というか理不尽でした。
 前回、統一地方選挙前の報道の少なさを指摘しましたが、選挙後も変わりません。今回の選挙で起きたこと、その変化の兆しをすくい上げ、そのことがなにを意味しているのかを解き明かしていくことが必要です。
 東京の地上波テレビは、どうしても全国向けの編成優先になるため、東京のニュースは数えるほどしかありません。でも杉並で起きていることは、やがて全国各地で起きる予兆のように感じます。地上波では無理なら、最近報道番組に力を入れ始めたBS放送で、この政治の「たしかな変化」を取り上げてはいかがでしょう。   (放送作家)

しんぶん赤旗20230504