〝ざんねん〟な子育て支援

しんぶん赤旗2023年5月5日(金)掲載記事  記事pdf

岸田政権
給食無償化「課題を整理」だけ
大学授業料引き下げ検討せず

 岸田文雄首相が鳴り物入りで3月末に発表した「異次元の少子化対策(試案)」―。首相は政権の「最重要課題」と位置づけますが、突っ込みどころ満載の〝ざんねん〟な中身が鮮明です。

  保育士基準

 保育士1人で最大30人の子どもをみる劣悪な保育所の職員配置基準の改善は保育関係者の長年の願いです。
 「試案」には「75年ぶりの配置基準改善」の文字が躍りました。
 ところが国会で具体的な中身を問われると、小倉将信こども政策担当相は「基準自体を引き上げると現場が混乱する」と答弁。一部の保育所への手当増額でお茶をにごそうとしています。まさに看板に偽りありです。

  学校給食費

 統一地方選で茂木敏充自民党幹事長が実現すると触れ回った小中学校の給食費無償化。「試案」では今後3年間で取り組む「こども・子育て支援加速化プラン」に入りました。ただし「課題の整理を行う」というだけ。「(少子化対策は)これからの6~7年がラストチャンス」(岸田首相)といいながら、いたずらに時間を浪費しようとしています。

  教育費負担

 岸田政権も日本の高すぎる教育費が少子化の要因になっていると認めます。
 しかし、「試案」に盛り込まれたのは「大学無償化」の対象者の限定的な拡大と、大学院修士の授業料の〝出世払い〟だけ。出世払いは卒業するとすぐ返済が始まる学生ローンです。高校無償化の所得制限撤廃や大学の授業料引き下げは検討課題にも入りません。

  非正規雇用

  「試案」は非正規雇用労働者の有配偶者率が低いとし、非正規雇用の正規化を進めるための学び直しを支援するといいます。
 派遣法改悪をはじめこれまでの非正規雇用拡大路線や、国・自治体とも職員の2割超を非正規労働者が占めることへの反省はありません。保育士や介護福祉士など国家資格を持っていても賃金が全産業平均を下回る現実を放置したまま、学び直しを口にするのも悪い冗談です。

  医療無償化

 長年の運動と論戦が実り、子どもの医療費助成を実施している自治体への補助金を減額するペナルティー廃止が「試案」に入りました。ただし、国として子どもの医療費無償化を実現するつもりはありません。少額でも受診抑制で健康を脅かすことが明らかなのに、岸田首相は「無料化すると不適切な抗生物質の利用が大幅に増加する」などと言いだす始末です。

  男性の育児

 「試案」は2030年までに男性の育休取得率を85%に引き上げるといいます。直近の14%と比べると高く見えるものの、取得期間の基準は「2週間以上」。95%が6ヵ月以上取得する女性との格差は埋まりません。男性の取得率を上げるための育休手当の増額も4週間だけ。男性の家事・育児参加を増やす本気度がみえません。

  住宅の貧困

 日本の高くて狹い住宅事情も子育ての障壁になっています。政府も問題を認め、公営住宅に子育て世帯を優先入居させると言いだしました。この間、公営住宅の削減が進んだ結果、都市部を中心に数十倍の応募倍率が常態化しています。公営住宅を増やさずに子育て世帯を優先入居させれば、要件を満たしていても入居できない人がさらに増えます。       (佐久間亮)

  ◆岸田政権の〝ざんねん〟な子育て支援策

保育   75年ぶりの配置基準改善といいながら、配置基準には手を付けず

紿食費  統一地方選で無償化を触れ回ったが、「課題の整理」どまり

教育費  高校無償の所得制限撤廃や大学の授業料引き下げは検討もされず

非正規  労働法制改悪や非正規公務員の拡大に反省なし

医療費  国として子どもの医療費無償化に取り組む意思はなし

育休   男性の育休取得率を引き上げるというが、手当増額は4週間だけ

住宅   公営住宅を減らしながら、子育て世帯の優先入居をうたう

しんぶん赤旗20230505