「家父長」政治更新を

こんな政治でいいのか
私も言いたい ジャーナリスト北丸雄二さん

※しんぶん赤旗2024年4月28日(日)掲載記事 記事pdf

 自民党政治の間違いの大本は、社会の基本たる「家族」に関する大きな勘違いが原因です。
 岸田首相は「社会が変わってしまう」からと、結婚の平等(同性婚)や選択的夫婦別姓の実現を拒みます。しかし核家族化や女性の社会連出が定着してすでに50年。社会はとっくに変わっているのに政治が昔の「家族」像にこだわって更新されない。
 チグハグなんです。大切なはずの昔の「家」が残る震災の能登では「コスト」を問題として復旧が甚だしく滞っています。先日、輪島などを巡りましたが、全く片付いていない。ひどいもんです。他方、今後の多様性社会の原動力になる新しい「家族」像では、最高裁が犯罪遺族に対する被害者給付金受給資格は同性パートナーも平等と判決したり、札幌高裁が同性カップルの結婚を認めないのは違憲としたり。なのに自民党は、統一協会など宗教カルトの命じる硬直した家父長家族にこだわって動かない。カルトは教祖さまが絶対の家父長で、自民党も家父長的だからです。
 政治資金パーティーをめぐる裏金問題は、家父長的な派閥構造をカネの力で維持するためでした。だから金ヅルである企業献金を禁止できない。健康保険証のマイナ保険証への切り替えだって、「納期を守れ」(経済同友会の新浪剛史代表幹事)と命じる企業論理の言いなりです。
 トドメは日米首脳会談。米軍と自衛隊の指揮系統連携強化の実態は一体化です。アメリカは世界で最も攻撃的な軍事大国。平和憲法日本と整合するはずがないけれど、アメリカは自民党の「家父長」ですからね。
 ニューヨークで25年間過ごしたあと、6年前に拠点を日本に移しました。自民党の杉田水脈が「LGBTは生産性がない」と寄稿したころでした。アメリカはエイズ禍を経て新しい家族、多様な生き方に気づき、軍事大国の一方で民主社会も更新した。私はゲイ男性ですが、その視座で日米社会の更新の差異を論じた著作『愛と差別と友情とLGBTQ+』を上梓しました(2022紀伊國屋じんぶん大賞2位)。NHKの朝ドラが日本の「家制度」の下で声をあげた女性の姿を描いています。社会の抑圧とその更新の闘いは性的少数者のそれに重なる。毎朝、共感の嵐です。   (聞き手 武田恵子)