人口減少の責任女性に転嫁

時代錯誤の「消滅可能性自治体」

自治体破壊の狙い明らか

※しんぶん赤旗2024年4月29日(月)掲載記事 記事pdf

 民間の有識者会議「人口戦略会議」(議長・三村明夫日本製鉄名誉会長)が24日、社会保障・人口問題研究所が試算した日本の地域別将来推計人口に基づく「消滅可能性自治体」のリストを公表しました。子どもを産める若年女性人口(20~39歳)の将来動向から自治体別に「消滅」の可能性を推計したもので、“女性が子どもを産まないから人口が減少する”という古い発想にとらわれた時代錯誤の分析です。(森糸信)

 こうした公表は、今回が初めてではありません。2014年5月に有識者を集めた「日本創成会議」(座長・増田寛也元岩手県知事)が、若年女性人口が10年から40年までの30年間で50%以上急減する自治体を「最終的に消滅する可能性が高い」とし、「消滅可能性都市」のリストを公表しました(増田レポート)。今回も基本的な算出方法は同じで、20年から50年までに若年女性人口の減少率が50%以上となる自治体(消滅可能性自治体)が744あるとしています。

 設定自体が間違い

 日本の人口が減少し、地方が衰退しているのは、女性が子どもを産まないからではありません。労働法制の規制緩和による人間らしい雇用の破壊、教育費をはじめ子育てへの重い経済的負担、ジェンダー平等の遅れなど、暮らしや権利を破壊する政治が原因です。結婚するかしないか、子どもを産むか産まないかは個人の生き方の選択であり、政治が介入することではありません。若い女性が減っているから、自治体が消滅するなどという設定自体が間違っています。
 「増田レポート」の公表直後、当時の安倍政権は「地方創生」を掲げました。全国の市区町村に「人ロビジョン」と「総合戦略」の策定を事実上強制。政府が枠組みや基本目標をあらかじめ設定し、それに対応した交付金を配分することで、自治体を誘導しました。政府は当初、20年を目標に東京圏への人口流出のストップと合計特殊出生率の増加を掲げましたが、いまだに達成できていません。むしろ、15~20年には東京都が全国で最も人口増加率が高いという結果に終わりました。
 総務省が「増田レポート」に触発されて17年に発足させたのが、有識者による「自治体戦略2040構想研究会」です。同レポートと同じ40年を視野に、市区町村別の人口変動を分析。翌年まとめた報告書では「従来の半分の職員でも自治体が本来担うべき機能を発揮できる仕組みが必要」などと職員半減を打ち出したほか、「個々の市町村が行政のフルセット主義から脱却し、圏域単位での行政」とするなど、あからさまな自治体破壊を公言しました。
 「増田レポート」から10年が過ぎ、当時「消滅可能性都市」とされた自治体はまだ一つも消滅していません。一方、戦後、地方自治法のもとで自治体を大量に「消滅」させたのはだれだったでしょうか。99年から自公政権が連めた「平成の大合併」で、市町村数は3232(99年3月末)から1730(10年3月末)に減りました。合併により新自治体にのみ込まれた旧市町村の活力は喪失し、住民の声が行政に届きにくくなり、住民サービスは低下しました。だれが地方の活力を奪い、自治体の破壊・消滅を連めてきたのか明らかです。

 地域努力に水差す

 「消滅可能性自治体」の公表を受け、全国町村会の吉田隆行会長(広島県坂町長)は「これまでの地域の努力や取り組みに水を差すものだ」と批判。「国全体としてこれまでの政策対応を検証し、抜本的な対策を講じていく必要がある」と指摘しました。
 人口戦略会議は構成メンバーの大半を男性が占め、いわゆる「若年女性」はいません。まずは“子どもが産める若い女性が少ないから人口が減少する”という自分たちの古い発想こそが“消滅”の危機にあると自覚すべきです。