※しんぶん赤旗2023年5月25日(木)掲載記事 記事pdf
出生率2.95の岡山県奈義町
共産党と町民30年の運動で前進
現町政は「人口維持」目的に転換
ひとりの女性が生涯に産む子どもの人数を推計した合計特殊出生率が2.95(2019年)と全国でも高く、「奇跡のまち」とその子育て支援策が注目されている岡山県奈義町(人口約5700人)。しかし、いま同町で積み上げてきた子育て応援施策が、人口維持の手段へと変えられようとしています。
(岡山県・小田嶋美桜)
30年にわたって奈義町の子育て支援拡充に取り組んできたのが、日本共産党の森藤政憲町議です。町民の要求と運動が「子育てしやすいまちづくり」を前進させてきました。
奈義町は、岡山県の北部、鳥取県との県境にあります。30年前の同町の出生率は1.41。中学校の給食も幼稚園の放課後保育もない、県下でも子育て支援の大きく遅れた町のひとつでした。
当時、4歳から5歳までの全員が幼稚園に通う奈義町では、子どもが幼稚園に通うようになると多くの親が仕事を辞めなければならず、近隣の高校までの交通費月2万5千円は大きな負担となっていました。
三大課題を解消
森藤町議は①中学校給食の実現②高校生の通学費助成③幼稚園の放課後保育の実施-を子育ての三大課題と位置付け、毎議会で質問。親を中心に「中学校給食を実現する会」がつくられ、2千人以上の署名は議員内に根強くあった「愛情弁当論」を乗り越える力となりました。
町民と日本共産党の要求に応え、奈義町は「小さくても輝く自治体」「福祉は後退させない」という姿勢で「箱物事業」を抑制して財源を確保し、町民の暮らしを守る施策を次々と進めてきました。「三大課題」は実現。若者から陳情が出されたスケートボード場や「若者住宅」、高校生までの子どもの医療費無料化なども実現しました。長年の地道な積み重ねが、「子育てしやすいまち」奈義町として高い出生率に現れています。
ところが現在の奥正親町長は、「全ての施策を人口維持へ」の姿勢で子育て支援を地方創生事業に組み込み、人口問題に狭める傾向が顕著になっています。
最近では、地方創生交付金を活用した「チャイルドホーム」(地域で子どもを一時預かる施設)や「しごとえん」(子育てをしながら「ちょっとだけ」働く就労支援)が、検証もないままに出生率上昇の施策として取り上げられています。その一方で、公共スポーツ施設の職員増や高齢者福祉の拡充を求める声があっても、人口維持に直接関係しない施策には冷たい町政の姿も見えます。
町民の声聞いて
合計特殊出生率の高い奈義町ですが、新たに生まれる子どもは年間50人を超えず、大学進学を機に町を離れる若者も多く、人口維持政策は大きな困難を伴っています。
森藤町議は、テレビ報道などにみられる「3人子どもをつくるのが普通」という過度の強調は、子どもの少ない家庭や子どもをもたない選択をする人に後ろめたい雰囲気を与え、見えなくしてしまうと警鐘を鵈らしています。そのうえで 「転入者の増加に力を入れるだけでなく、町民の声に寄り添い、暮らしに目を向けた施策が求められている」と訴えます。